しのぶれど
周防と若宮は快調。千早は四連取されている。新が以前、「試合をするときはいつも あの部屋(ボロアパート)に戻るんや」と話していたのを思い返す。 芹沢読手の喉元からの音を、周防が捕まえに来る。読まれたのは「ふくからに」。千早は取った札を拾いなが…
新に対して「名人にはなれない」と吐いた周防。太一は彼が以前、千早にも「クイーンになれない」と言ったことを覚えている。周防は心の中で「また真島くんに怒られる」と謝りつつ、鬼の形相。 言葉でも 試合でも曲げてやる 新は周防に自陣を守らせた上で攻め…
長崎から来た周防兼子と正と合流し、乗り継ぎホームへ向かおうとする太一が、千歳と遭遇。千早の着物が入ったキャリーバッグを太一に押し付け、千歳は立ち去ろうとするが。 名人戦の大盤係は、周防側が須藤、新の方は松林舜。新がリードしている。栗山先生の…
予選第2試合目の読手は、牧野美登里六段。周囲の誰もが、身体がよく動き、音の反応も良く、一試合目で地力を見せつけた千早が優位と見ている。 最初の札は「おくやまに」。一戦戦って千早が「おおえ」と「おく」が得意と気付き、結川が千早陣から両方ぶっと…
九月。千早は電車内でも勉強。大江が貸してくれた「英語でよむ万葉集」を開くと、彼女が勧める34ページ目に「たご」の原歌と英訳があった。 田子の浦ゆ うち出でて見れば 真白にそ 不尽の高嶺―― white, pure white―― 見入っていると突然、「へえおもしろいね…
若宮は伊勢の自宅兼明星会練習場を訪ねる。初めて来たのは六歳の時で、走って通った。ところが伊勢は不在で、クイーン戦で大盤係を務めた結川桃との練習を会の女性に勧められる。 クイーンのお手並み 話のタネに拝見しまひょか 遠慮しようとする結川と、正座…
大江は田丸の提案通り、総当たり戦を繰り返して予選メンバーを決める参考にすると宣言。あくまでも参考だ。西田は千早はかるたバカなので戻って来ると楽観している。筑波は千早に加え太一も戻って来ると信じ、自身こそエースになってやろうと張り切る。花野…
運命戦。原田先生は周防に送った「なにわえ」が出ないと予想しつつ、手元に残した「なにし」に迷う。「なにし」は語呂合わせで、名人の札とも言われている。一旦立ち上がり、場の空気を拾って呑み込む仕草。千早が見入る。 原田先生がよくやってた いつもの……
若宮は着物の袖が邪魔そうだが、いつもの通り。猪熊もブランクを感じさせない取り。動きの速さと正確さの若宮、誰よりも速く聞き分けられる”感じ”の猪熊。クイーン戦は17-17の互角。 周防が妙な体勢で、クイーン戦を覗き込んでいる。観衆は意味が分からなか…
太一の対戦相手は、ヒョロが吉野会大会B級決勝で負けた豪徳寺。 なにやってんだろ おれ なにやってんだろ 名人になりたいって みんな思ってんのかな おれは修学旅行休んでまでなにになりたいのかな 太一が戦っている姿を見て、太一母は苛々。 太一 名人位ク…
千早は三枚あった差が一枚に。西田が千早に、猪熊が元クイーンだと教えた時、千早の肩に触れたが力んでいなかった。千早にとってのクイーンは若宮だけ。 若宮の強さへの信頼が あいつをリラックスさせてる――… でも、若宮は無敵ではない。先日、新に負けた。…
A級個人戦三回戦。千早の頭には、若宮と戦った過去の記憶。 去年詩暢ちゃんと戦ってから一日だって消えない あの速さ 強さ 詩暢ちゃんに勝つことだけを目標にしてきたの 全力を見せて 日本一の 世界一の クイーン若宮は安定の速さ。 決まり字までまったく動…
ペナルティの反省文を書いている新の元に、瑞沢がベスト4で試合中という情報が入る。 勝ってる がんばってる 太一 千早 若宮は新に暇潰しに、かるたをしようと言う。今日は団体戦の日だから、と断る新。 詩暢ちゃんにとっては 試合さえ暇潰しや 強すぎて 瑞…
二回戦。初めてオーダーに入った筑波は、A級選手相手に苦戦。 あんなみっともないマネしてまで出たかった試合なのに 自信があったのに 自信が持てるのはかるただけだったのに―― 学校では深作先生が宮内先生に、かるた部の新入部員数を追及していた。宮内は20…
学校の教室。駒野は部活や公式戦で取って来たデータを見て、千早の一字決まりが20枚くらいあることに気付いたと言う。 「しら しの ゆら ゆう かく かさ ちは もろ もも ひさ きり うか うら は頭の一字で取ってんじゃないかなあ 自分でもわかるだろ?」 千…
名人戦・クイーン戦のテレビ中継。細くて軽い身体だった若宮の武器である速さが鈍っている。一回戦は五枚差で若宮勝利。山本は落ち着いて若宮を見ていた。 ここに座るまで 若宮詩暢が怖かった 去年の強さの記憶が残って なのにどうよ! 今年のこの丸まりよう…
千早は通学途中に他校の男子生徒に交際を申し込まれる。断るべきだと言う大江だが、千早は未練がある。 「つきあってとか言われたの 初めてだもん これを逃したら もう一生言われないかもしれないもん」 初告白と聞いて「無駄な美人」だと呆れる西田。ずっと…
新と坪口の対戦は、坪口の辛勝。引き上げる新の前に、太一が現れた。 「……遅ぇよ 広史さんはうちのエースなんだ ブランクが一年半もあるやつに負けねーよ」 太一は目を合わせないが、新はその目に涙が浮かんでいるのに気付く。 千早は床に這いつくばってノー…
対戦相手の金井に軽い嫌味を言われ、空札も続くわで、焦りのあまりお手付きを連発する千早。敵陣に手を伸ばし、自陣を取られてしまうミスも出る。 「つまらないわね 綾瀬さん 札とだけ戦ってるみたい」 気付けば、嫌な札ばかり送られている。配置を確認して…
千早はA級昇格に向けての大会で、勝ち進んでいる。その強さにも白目剥いて即寝するのにも、驚く太一。即寝千早に自分の上着を掛けると、千早も気付いて「太一やさしーなぁ」、原田先生も冷やかし気味に「やさしーなぁ」。千早は伏せたまま言う。 「太一 私が…
札を一枚取れて嬉しい千早。千早に先取され、闘争心を燃やす新。 取られた まえやったときもそうや 気を抜いてたわけじゃないのに 「一字決まり」では千早に負ける!? 新の活躍により、ヒョロチームに大差で勝利。ここで新が小学校一年から五年生までの学年…