ゆうされば
新と太一の三試合目。畳に並べた50枚に「ちは」はなかった。 転校先に千早がおらんかったら おれたちはどうなっとったやろう? 若宮が千早に、三番勝負ではなく五番勝負でのクイーン戦を持ち掛ける。初めての五番勝負にて、話題性のある「女子高生」クイーン…
予選第2試合目の読手は、牧野美登里六段。周囲の誰もが、身体がよく動き、音の反応も良く、一試合目で地力を見せつけた千早が優位と見ている。 最初の札は「おくやまに」。一戦戦って千早が「おおえ」と「おく」が得意と気付き、結川が千早陣から両方ぶっと…
太一が来た。願ってはいたが思いがけぬ人物の登場に、驚く部員と母親達。西田は隣の千早に伝えようとするが、千早は目の前に集中し過ぎており気付かない。太一は千早の陣を見る。 か… 勝ってる いま 6枚差? 新 相手に 勝ってるのか!? 新は額の汗を拭く。 …
試合が始まった。大江と花野は応援席。 試合数こなしてくると より感じる 富士崎の選手の身体の強さ 体幹の確かさ 強豪校を目指してる段階の私たちと すでに強豪である高校の 強い足腰 筑波の息がもう上がっているのが、花野は気になる。連戦で、僅差負けが…
千早は周防を前に、世界が歪むような感覚。 偶然だと思ってた 枚数差を調整して狙うってことは 取れるのに取らない札があるってことだ 相手のミスも数字のために誘うってことだ そんな選手がいるなんて そんな人が名人だなんて 須藤は千早の様子を伺う。 綾…
千早は三枚あった差が一枚に。西田が千早に、猪熊が元クイーンだと教えた時、千早の肩に触れたが力んでいなかった。千早にとってのクイーンは若宮だけ。 若宮の強さへの信頼が あいつをリラックスさせてる――… でも、若宮は無敵ではない。先日、新に負けた。…
肩に手を掛けられた新は、相手のことがすぐには分からなかった。 「あっ 詩暢ちゃんか! テレビと全然ちがうでわからんかった 激太りしたり激やせしたりなにやってるんや?」 子供の頃の対戦で、新に負けた若宮。 「……おかげさまで4年は無敗や でも まだまだ…
四組が運命戦。北央はきっちり「札分け」し、確実に二勝稼げるように企てて来た。 この形になったら 敵陣を抜かなきゃ勝てない―― 準備不足だ こんな状況になることを想定してなかった 団体戦の経験不足だ 経験を蓄積した伝統校 北央との差がここで出るなんて…
学校の教室。駒野は部活や公式戦で取って来たデータを見て、千早の一字決まりが20枚くらいあることに気付いたと言う。 「しら しの ゆら ゆう かく かさ ちは もろ もも ひさ きり うか うら は頭の一字で取ってんじゃないかなあ 自分でもわかるだろ?」 千…
注目選手の立川が破れ、心無い人達が噂する。 「若宮詩暢の再来かと言われてたけど あれほどの才能じゃないねえ」 千早は昔、新に言ってもらったことを思い出していた。 梨理華ちゃんだって きっと最初はだれかに言ってもらったんだ ”才能がある” 宝物にして…
東日本予選まであと三日。千早がイメージするのは、吉野会大会で見た新。 水みたい 流れてるみたい あの印象を 身体に降ろすには 駒野が千早の陣から取ったが、千早が妙に静かだ。 いつもの綾瀬なら…… 取られたら上とか横に首が振れるのに 目から札が離れな…
新と坪口の対戦は、坪口の辛勝。引き上げる新の前に、太一が現れた。 「……遅ぇよ 広史さんはうちのエースなんだ ブランクが一年半もあるやつに負けねーよ」 太一は目を合わせないが、新はその目に涙が浮かんでいるのに気付く。 千早は床に這いつくばってノー…
無駄美人の千早だけではなく、実力テスト一位の太一も、校内では目立つ存在。そんな二人が組んでかるた部を作るも、無駄部と囁かれる。部室に畳を運び入れ、一息がてら雑談。千早はクイーンを目指しているのに、現クイーンが同い年であることすら知らなかっ…
三人での下校中。 新も太一もいなくなるの? 一人になるの? 千早は「三月の大会には出ない!」と逃げ出す。 出ない かるたの大会なんか もうすぐ一人になるんなら 一人になるんなら かるたなんか楽しくない 男二人は「おれのせいで」「ぼくのせいで」と、原…