あしびきの
周防陣から難しい「む」を抜いた新。一旦眼鏡を外すと、畳に並ぶ札がぼやけて見える。 わからんが おそらくもっとだ もっと視界が不確かだ どれだけ心許ないやろう 周防の状態をそう推察する。新が小学生の時に太一と眼鏡無しで対戦した経験から、周防が得意…
周防の払い手に勢いが出て来た。 読手さんがぼくを 天才にしてくれる 千早は若宮の得意とする敵陣左下段から「ほととぎす」を抜いた。札を拾う千早を、周防が見る。 きみもやっぱり "こっち側"か 新も千早を見て、初めてかるたを取った小学生の時を回想。 あ…
「このたびは」を詠んだ菅原道真、「せをはやみ」の崇徳院は、平将門と並んで日本三大怨霊と呼ばれるが。 べつに怨霊とか思ってへん ずっと遊んできたおっちゃんたちや 敵陣で並んでもかまへん でも 千早 あんたはわざとやったな? 若宮からの厳しい視線で、…
新がかるたを始めたのは4歳頃。7歳で年上の仲間に勝つ程に上達。父に勧められた野球やサッカーは下手なので、仲間から邪魔者扱い。しかし、祖父とのかるたは違う。 めきめきと やればやるだけ うまくなる感覚 ほかのなにでも得られなかった 自信 強い子と当…
髪を切って現れた太一を見て、驚愕する面々。驚きつつ右手を上げている新は、太一に訝しがられる。 「たい…太一に会ったら 今度こそハイタッチやって思っとったから… 3人で勝ってきて ここに来れたからや」 千早は小学生の自分達が最後に出た大会、そして太…
美馬は原田先生に苦戦。その原田は膝が痛み、札を拾うのも一仕事。田丸は観客席を見渡すが兄の姿は無く、他部員達の視線も千早の方。それでも頑張ろうと集中する。 千早と理音はM音の聞き分け勝負。千早は相手の反応を見て、札を移動。「む」と「みち」を分…
千早は咄嗟に飛び出し、太一に訴える。 「だ だめ 太一 だめ そんなのはしちゃいけない賭けだよ」 しかし、千早を見る太一より先に、須藤が反応。 「うっせえ 綾瀬 どうせ攪乱するための作戦だろ ふざけんな 乗んねえよ」 立ち去る須藤、真っ直ぐ前を向いた…
試合が始まった。大江と花野は応援席。 試合数こなしてくると より感じる 富士崎の選手の身体の強さ 体幹の確かさ 強豪校を目指してる段階の私たちと すでに強豪である高校の 強い足腰 筑波の息がもう上がっているのが、花野は気になる。連戦で、僅差負けが…
痛む膝を抑え、立ち上がる原田先生。 膝をかばいもせず 策もなく取り合っとった 夢でも見てたか 飲まれた…… こんな17歳がいるのか 手を広げ、場の空気を呑み込む。再び集中しようと努めるが、次も新に自陣を抜かれる。 『偉大な先人の物真似をする若僧』 ………
新は村尾相手に11枚差。中座した間に何が読まれたのかは、減った四枚の札の他、空札が何枚読まれたか、決まり字がどう変化したのかも分からず、枚数差以上のハンデとなる。 観衆が諦める中、新は札を動かし、戦う姿勢を見せる。運良く自陣が出て取れた。次の…
千早と太一、結果を出すのはどちらか。原田先生は腕組み。 世の中には結果より努力が大事って考え方もあるが 指導者にも生徒にもそれは本当は苦しいんだ 「がんばった」も「きつかった」も風のように流れていってしまう 「結果」は石なんだ 「がんばった」を…
「ちはやぶる」で千早が払った札が、猪熊の札とぶつかった。同じスピードで取ったのだ。元クイーンの猪熊は、桜沢先生の五つ下のライバルだった。桜沢はクイーン戦で四回も挑戦したのに勝てず、どうやったら強くなれるのかを訊いた。 えー 聴こえるから取っ…
運命戦の基本は自軍死守だが、太一は敵陣を攻めて行った。その作戦と太一の視線に、西田は自陣「あ」の札がまだ残っているのかと半信半疑。空札が続いて消耗する中、太一は考える。 千早…… おまえだったらわかるのかな 「あ」になる前の音 「せ」になる前の…
千早は棄権。太一の声掛けで、残された四人で円陣を組む。 「わかってるな この場にいちばんいたかったのは千早だ おれたちが簡単に負けたら 千早は絶対死ぬほど泣く 勝つしかない 瑞沢勝つぞ」 宿舎で眠りから覚める千早。布団を抜けて部屋を出ると、廊下に…
千早がやっと乗って来た。須藤は千早の取り方が気になった。 いまの速さ―― 「う」でもう払ってる 「うら」がまだ読まれてないのに お手つき覚悟で狙ったのか? まさか 原田先生は読手一人でもう五試合目だと知る。 こんなに声を出す千早ちゃん 見たことがな…