chiha memo

漫画「ちはやふる」の伏線や感想などの超個人的備忘録

第204首 冷徹な鬼になる自分を止められない

新がかるたを始めたのは4歳頃。7歳で年上の仲間に勝つ程に上達。父に勧められた野球やサッカーは下手なので、仲間から邪魔者扱い。しかし、祖父とのかるたは違う。

めきめきと やればやるだけ うまくなる感覚 ほかのなにでも得られなかった 自信 強い子と当たっても 削られることのない 確信 ああ おれもいつか名人になる じいちゃんみたいになる

名人戦挑戦者決定戦第3試合は、新が自陣敵陣に関わりなく安定して取っている。五十嵐読手は、新の取りのリズムは気持ち良いと感じている。太一については――

ひっついてくる感じ―― 呼吸をつかまれてる 決まり字の短い札に よく反応できてる

周防は何故強いのか太一に問われ、こう答えた。

「ぼくは 読手さんだけはどうでもよくない 読手さんがぼくを天才にしてくれる」

太一は「む」と「す」を自陣から取った。新は動じない。栗山や村尾は考察。

耳のチューニングの問題や 新くんが1.1字くらいを集中の頂点にしてるところを 真島くんは1字にしてるんや 1字の集中では 2字3字の札は遅れる。

千早が目覚めた。大江に状況を覚えているかを問われる。

「『たご』が助けてくれて…… かなちゃんの歌なの… かなちゃんの歌 たくさんあるの 『おおえ』も『かぜそ』も 『たご』はとくに 言ってくれたでしょ? 富士のこと 大きいものには引力があるって――」

若宮が現れる。千早は正座して「よろしくお願いします」と一礼。若宮は手を差し出し、千早に話す。

「千早 相談があるんや 聞いてくれるか? ――千早 やってくれんか? うちと五番勝負のクイーン戦」

千早は恐れを感じつつ見入る。

詩暢ちゃんがいるのは 浦安の間じゃない 田子の浦から見上げていた美しい不尽の高嶺は 本当は 花も草もない荒野――

太一が取っているのは一字決まりくらいで、新が順調に取っている。

いつもなにかのイメージに自分を合わせて 力を借りてきた お手本があった じいちゃん どんなイメージを持てばいい? 前に進む足を止められない 太一の一番きれいな気持ち それをおれが打ち砕くのに こんな冷徹な 鬼になる自分を止められないのに

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名人戦挑戦者決定戦三戦目。自陣をきっちり守って来ていた太一だが、新に攻められ捲りで、取れているのは一字決まりのみ。

太一の取りについての「呼吸をつかまれてる」は、第60首の高校二年の都予選にて、読手を務めた須藤が千早に対して全く同じ感想を述べている。一方の新は、読手が気持ち良く読めるような取り方。ただ、新は常に自分の世界に浸って取っている。読手を意識したことがあるのだろうか。第199首で肉まんくんが視界に入りたいと独白していたが、読手側だって恐らく同じだ。その辺りが、読手を大切に考える周防や、読みに寄り添っている太一と違う。

1.1字で聴く作戦は、筑波が1.5字で聴き分けていた第158首を思い出す。現在は2字決まり以上を上手く取れずにいる太一だが、試合が進むにつれ一字決まりが多くなるので、終盤に盛り返したい。しかし、新ならば1.1字から1字に耳を合わせるくらい、難なく出来そうでもあり。

作中では三番勝負が基本で話が進んでいたのを、五番勝負に変更となる現実世界に上手く合わせて来た。千早は体力がありそうだが、詩暢は大丈夫なのか。とはいえ、千早は試合ごとに未だ即寝してるし、今回も詩暢の前で倒れている。詩暢はむしろ、こいつ体力なさそうだからラッキー、とか思ってたりしてw

新がすっかり悪役顔だ。鬼という言葉は、西日本予選の第187首でも「負けたあと鬼の形相で悔しがる」や「悔しさを先取りして鬼になってはじいちゃんが笑う」などで登場する。試合中かつ新優勢なのに、既に鬼の状態。もう一つ、詩暢や太一母も読んでいた伊勢先生の著書は「天地を動かす鬼神たれ」で、つまりは名人になりたければ鬼になれと書かれているのだろう。但し、詩暢への接し方を見るに、先生が正しいとは限らない。思えば先生と詩暢のやり取りを描いた第178首での、詩暢のホラー顔も鬼と言えるかもしれない。

読まれた札は「いにしえの」「ひさかたの」「やまざとは」「みかきもり」「おおけなく」「あけぬれば(なおうらめしき~)」「むらさめの」「すみのえの」「はるすぎて」「あしびきの」、そして何故か再び「あけぬれば」、「ほととぎす」。