chiha memo

漫画「ちはやふる」の伏線や感想などの超個人的備忘録

第40首 私が挑戦者になる

注目選手の立川が破れ、心無い人達が噂する。

「若宮詩暢の再来かと言われてたけど あれほどの才能じゃないねえ」

千早は昔、新に言ってもらったことを思い出していた。

梨理華ちゃんだって きっと最初はだれかに言ってもらったんだ ”才能がある” 宝物にしてきたんだ 簡単に触れないで

太一は仲間から離れ、新にメールを打ち始めた。

千早一回戦突破。新もがんばれよ。

画面を見て思う。

がんばれじゃねえ がんばれじゃねえよ

突然、サングラス姿の男が和菓子を差し出しつつ、太一に話し掛けて来た。

「きみは A級の人?」

太一が応援で来ていると答えると、「じゃああげない」と和菓子を引っ込め、去って行った。見れば、手当たり次第同じことを訊き、該当者にだけ和菓子を与えている。原田先生にも和菓子を差し出し掛けた。

「私はけっこう 試合まえに固形物食べて眠くなったら困るので 周防くん」

彼こそが現名人の周防久志だった。周防は名人戦だけで、一般の大会には出て来ない。

「すみません 強い人としか戦いたくないんです……」

周防の声は常に小さく、聴き取れたのは言われた原田、傍にいた太一、そして千早だけ。原田は立腹。周防は大学でかるたを始めて僅か3年で名人になり三連覇。

「悔しいじゃないか 今年こそ 私が挑戦者になる!」

太一は原田の言葉を思い返す。

武器がいるんだ 天才に潰されないために

千早が原田に二回戦の相手を報告しているが、原田はあっさりしたものだ。

「山本由美さん? ほんとに? 千早ちゃん 運ないなー! じゃあねー」

太一はメールをまた打ちながら考えていた。

おれたちの武器は 原田先生がいてくれることだ がんばれと言わず がんばってくれてることだ

西日本大会一回戦は、新は突破したが、兄弟子の村尾が敗退。彼は二年前に名人に挑戦した実力者である。最近は練習もしておらず、諦めたようだ。村尾が立ち去り、残された新の元に太一からのメールが届いた。

千早一回戦突破。おれも必ず東日本代表を目指すから 新は西日本代表になれ

千早の二回戦の相手、前クイーンの山本由美は憂鬱そうに座っている。

綾瀬千早さん…… うわさどおりきれいな子…… 名前も顔も平々凡々な私とは大ちがい…… イヤになる なんなの そんなキラキラした目して…… やりにくい…… ああ もう なんで私…… また予選になんて出てるんだろう……

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周防が来場。太一との対面は、非常に印象的な見開きページになっている。一回戦勝利後の千早の背景に描かれた札は「ちはやぶる」「ちぎりきな」「わがいおは」「つくばねの」「ゆうされば」「わたのはら・や」。