chiha memo

漫画「ちはやふる」の伏線や感想などの超個人的備忘録

第245首 歌に意味に情景に引き寄せられる

千早、新ともに「ちは」札を取った。小学生の時の言葉、「あれは名人になるやつだから」「じゃあ綾瀬さんはクイーンやの」の実現に近付く一歩だ。

やっと やっと 迎えにきたよ 迎えにきたよ

沸く千早応援団の部屋から、そっと出る太一。太一はロビーの椅子に座り、「ちは」札を取るイメージで素振りしていた。会場の歓声に振り向いたところで、花野が柱の陰で泣いているのを見つける。

「ありがとな 花野さん かるた部に入ってくれてさ 筑波もさ」

千早は二人について話していた。

初めてできた私の後輩 優しくて 人の弱さに共感できるふたり 花野さんと筑波くんが作るでこぼこな部室は きっと私が作った部より 居心地がいいよ

「はなの」「あきか」が読まれ、千早が取る。しかし、続く「おおえ」を敵陣から取れず、3-2の劣勢。若宮が千早に何かを囁いている。周囲が訝しむ中、千早がタイムを取って水分補給。次の「かさ」は若宮が千早陣から取り、若宮が残り一枚となるが、「つく」「たご」を千早が連取。

かなちゃんがくれた大きなものに 歌に意味に情景に 引き寄せられる そこがどんな荒野でも

名人戦側は目の状態が良くない周防が、涙を流しながらサポートしてくれる須藤の気持ちに応え、どうにか粘って接戦。そして何と、クイーン戦名人戦、両試合が運命戦という展開に。

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第244首 やっと迎えに来たよ

周防と若宮は快調。千早は四連取されている。新が以前、「試合をするときはいつも あの部屋(ボロアパート)に戻るんや」と話していたのを思い返す。

芹沢読手の喉元からの音を、周防が捕まえに来る。読まれたのは「ふくからに」。千早は取った札を拾いながら考える。

私が戻る部屋は 私が一番楽しく かるたを取れたのは

思い浮かべたのは、瑞沢かるた部の部室。送り札は「わた・や」。千早の想像の中で、新が部室の掃き出し窓から顔を覗かせる。千早が「勝つよ」と言えば、新は「ほんとに?」と答える。「わた・や」がすぐに読まれ、新と千早がそれぞれ取る。千早からの送り札は「おおえ」。

若宮は部室前の廊下、扉の窓越しに影を見せるだけ。そして読まれたのは「しのぶれど」。若宮が自陣から取る。部室に若宮は来なかった。

周防は集中して取っているが、畳に飛ばした札を見つけられない。須藤が拾ってくれる。

「ありがとう 須藤くんがいてくれてよかった もうほんと……厳しいな」

周防が「こぬひとを」を取り、須藤が札を拾う。若宮の目には、詠み人である定家が周防に微笑みかけているように見えた。

新の腫れた指を、周防が心配する。

「え ああ 大丈夫です 99枚目まで取れます」

新は自分のペースで試合を進めており、四試合目で珍しく送った「ちは」が取れなくとも、五試合目の最後の最後まで見ているのだ。そうと気付いた周防は、送り札に「せ」を選ぶ。

追い詰めたら… 綿谷新は鬼のような残忍さを出してくると思ってた それが綿谷新の本性だと でも… 目の前の彼から今出てくるのは 小さな子供のような 透明で前向きな気持ち

周防がまさかのお手付き、セミダブ。新が「ひさ」を送る。「ちは」は送らない。

新 自分らしくいね 自分のかるたをしね ほんな新といつかかるたがしたいよ じいちゃんは

下の句が終わり、次の一首へ。

ずっとじゃなくていい 下の句が読み始められて 余韻3秒 無音の1秒 その4秒 どうか誰も 息をしないで

部室の掃き出し窓から、小学生の千早が入って来る。千早は小学生千早に微笑み、抱き締める。

やっと 迎えに来たよ

「ちはやぶる」が読まれ、手を伸ばす千早と新――

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第243首 示そう、私たちの鍛えてきた気力と体力を

クイーン戦側は空札が続く。千早は毎回立ち上がって確認。「さびしさに」で二人とも手を伸ばすが、タイミングはセイム。飛んだ札を若宮が拾うが、千早は強気に札を送る。更に札を移動し、中央に「す」札を置き、軌道の先にある「しの」「せ」を狙う作戦だ。若宮がそれに苛立つ間に、千早は怒涛の連取で初のリードを奪う。

若宮の足が攣った。千早が心配して声を掛けるが、若宮は跳ね除け自力で治す。札の神様が見守っている。

よかった あの子のおかげね 試合続けられそう よかった よかった おおきに

畳に並ぶ札を見て、はっとする。

わかっとった わかっとった 札の中に小さな神様なんておらん みんなの声は 全部 うちが思ってたこと

解説の伊勢先生が後悔を語り始める。若宮に年上の選手ばかり当てて、友達と楽しく取るかるたを否定していたこと。女性選手が五試合も戦うのは無理と決めつけ、話を聞き入れようとしなかったこと。

「でも 若宮さんと綾瀬さんが 示してくれてる そんなことないって」

若宮がポーチに仕舞っていた襷を、千早に差し出す。それは前年のクイーン戦の時、千早が大切にしていたハンカチを割いて作った急造の襷だった。

「大事なもんを 長い間借りててごめんやで おおきに 千早」

千早は黙ってそれを受け取り、襷を着ける。

示そう 私たちの 鍛えてきた 気力と体力を

次に読まれたのは、浮き札としていた「す」。札が折れる程の取りはセイムで、若宮がすんなり認め、千早の取り。

示そう 二人で 一人より 友達と一緒に頑張った方が 強くなるって

白熱した戦いが続く。

示そう 示そう これほどまでに 自分を信じられること

控室で見守る千早応援団。太一は口元を覆って見入る。

お願い 誰も 息をしないで
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