chiha memo

漫画「ちはやふる」の伏線や感想などの超個人的備忘録

第242首 見えなくなるのはいやだな

新に対して「名人にはなれない」と吐いた周防。太一は彼が以前、千早にも「クイーンになれない」と言ったことを覚えている。周防は心の中で「また真島くんに怒られる」と謝りつつ、鬼の形相。

言葉でも 試合でも曲げてやる

新は周防に自陣を守らせた上で攻める作戦だったが、周防は新の陣からきっちり「おぐらやま」を取る。周防は「わ」から始まる札を続けて送ったり、空札なのに手を出して新のお手付きを誘おうとするなど、「ミスをさせるかるた」の本領発揮。

バカだな 話し合ってわかり合おうなんて ぬるいこといってないで 殴り合おうよ かるたで 僕は僕のスタイルで 限界まで醜く取ってやる

心中で毒づきながらも、畳に這いつくばるようにして札の配置を確認する周防。


須藤は全盲でかるたを教える先生を訪ねた際、目隠しした上で対戦したところ、暗記は出来ていても距離感があやふやで苦戦。先生は声が大きく、目も大きく、かるたに夢中になることで痩せて結婚まで出来て、と周防とは対照的な人物だった。

どうやったらしがみついてもらえるだろう どうやったら努力してもらえるだろう あんな かるたが好きじゃない人に

周防は突然、新を参考に、これまでにしたことのなかった素振りをしてみる。二ヵ月も狭い定位置で練習して来たのに、二試合で新に追い付かれた。が、そもそも二ヵ月しか練習していないのが間違いだった。

サラブレッドが こんなに愚直にやってきてるんだ もっと目を使え まだ見えてるんだ 体を使え

新は立ち上がって一息。作戦を巡らせる。

真っ向勝負だ 周防さん 多分あなたは おれに嘘しか言ってない あなたの嘘に あなたが気づいてない 本当のことを言わせてみせる 這いつくばって札の確認をする人が かるたを嫌いなわけがない

周防は札の美しさに見入る。

見えなくなるのは いやだな
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第241首 君は名人になれない

周防陣から難しい「む」を抜いた新。一旦眼鏡を外すと、畳に並ぶ札がぼやけて見える。

わからんが おそらくもっとだ もっと視界が不確かだ どれだけ心許ないやろう

周防の状態をそう推察する。新が小学生の時に太一と眼鏡無しで対戦した経験から、周防が得意な札を頻繁に移動すれば手を止められそうだ。そのうちの一枚は「ちは」。

控室で観戦する小石川は、新の右手中指の腫れに気付いている。

札極を厳しく攻められるのは 指先の強さがあってこそ

「ながらえば」「なげけとて」を新が二連取。それらは周防にとって、早く取る必要のない札。新は入念な素振りを繰り返す。

周防が口を開いた。

「…君は いるのか? …彼女とか」

赤面して狼狽えながらも、新が答える。

「いえ… いないんですけど 好きな子が後ろで頑張ってるんです」

背後のクイーン位を戦っているのは、若宮と千早。


千早はまだ体調が悪い。前の試合での配置に手を伸ばしたりと、反応が今一つ。幸いにして空札だったが、それが続くのがうっとおしい。新が鋭く「ちぎりきな」を取った。千早は新の動作を見ていて気付く。

送り札をして 丁寧に素振り 札の確認 空札は大事なんだ 空札の時にしか修正できない

千早は立ち上がって間を置く。軽く体操をして、暗記を再構築。「あらしふく」を渡って取った。新みたい、と太一は素晴らしい取りに感動。

ばかだな 千早ががんばれるなら なんだっていいじゃんか

そう思いながらも口元を締め、膝を強く掴む。

いたかった いたかったな あの席に

その表情の変化に見入る花野。


新が周防に訊く。

「周防さんは 競技かるたが好きですか?」

周防は新に目を向ける。

ねえ 兼子ちゃん 字がぼやける 人の顔がぼやける そがん世界やと 自分までぼやけていくったいな

でも、新から送られた「せ」札の力強さだけは分かる。

「…ねえ君は 名人になりたいの?」

周防は言葉を続ける。

「なれないよ 鍛錬を厭わなくて 真面目で素直で 環境にも恵まれてて 同じ畳の上で好きな子が戦ってて 健康で 僕の弟子を打ち負かすほど強くて なれないよ 君は名人になれない」
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第240首 名人とかるたで話したい

瑞沢応援団がいる選手控室に、太一も合流。芹沢読手の序歌から、第五試合が始まる。若宮が四連取。札の神様に語り掛けるように、千早に札を送る。

行っといで みんな 迎えに行くさかい 呼んでね うちを

札の神様が千早を見上げている。若宮の視線も千早の方に向く。千早は集中している。「めぐりあいて」と「よをこめて」は千早の連取。二枚の札が積み重なり、若宮の目には紫式部清少納言が喧嘩しているように見えて、険しい表情となる。そんな若宮を、紫式部清少納言が笑う。

あら あんた そんな怖い顔 ふふふ うちら この子のかるたも好きやで

千早が送ったのは「ちは」。


名人戦側は互角の戦いから、周防が「た」札を二枚連取。新が唐突に口を開く。

「周防さんの趣味って なんですか?」

五試合も戦ったのに周防のことを何も知らないからと、赤面しつつ補足する新。周防は次の「もも」を取り、札を拾いがてら「キャンプ」と答える。

一字決まりとなった「もろ」を、周防が難なく取る。新はまた質問。

「か 彼女はいますか?」

顔を覆ってめそめそ泣き真似をしつつ、「ひさ」を送る周防。

新は口下手で、村尾は「神様は新はそれでいいと言ってくれとる」と擁護してくれたが。

ほれでいいって言うてくれてたのは 友達やよ ほやけどもう変わらな

千早、太一、そして由宇。そのうちの一人、「ちはや」の襷を締めて、新が周防陣から「む」を抜く。

誰かのイメージじゃない 誰かの真似じゃない おれはおれの強さのまま 名人とかるたで話したい
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