chiha memo

漫画「ちはやふる」の伏線や感想などの超個人的備忘録

第89首 A級だよう

A級決勝。新は懐かしさをもって、若宮の独特な札の配置や暗記方法を観察していた。

「新 けっきょく いちばんかるたが強いのは かるたに個人で向かい合ってきた者や はっきりさせようや うちかあんたか どっちにしても仲間はいらん」

若宮の挑発に、新は「そうかぁ?」と流す。まずは若宮が二連取。新は穏やかな表情で観察し、次の一枚を綺麗な渡り手で取った。詩暢は目の色を変え、札に話し掛ける。

ごめん みんな 今日は捨てる札と狙う札を分けんとあかん

B級決勝の太一と理音は、観戦者側も真っ青になる程、互いにお手付きばかり。

やばい 早く勝って終わらせないといけないのに 千早に新の試合を見せるために……

理音が不調なのは、不安定過ぎる読手のせい。ただ、一音一音は綺麗。太一は連取される。

な…… なにを聴いたらそう取れるんだ F音もM音も 音になるまえの音をとらえられる人間 名人みたいな人間と才能と どうやって勝負を――

太一は立ち上がって一息。周防名人みたいと思うから、身体が固くなるのだ。笑顔の千早を思い浮かべてみた。友札の配置を分け、ちゃんと取り始めた。スピード勝負に乗らず、取れる確率が上がる攻め方だ。息を吐いて、頭の中で細かく作戦を練る。

どんどん変わっていく決まり字 暗記を積み上げて 確認して確認して 一字決まりは全部捨てる かっこ悪くていい

原田先生は言っていた。

まつげくん かるたで大事なのは才能だ ”感じ”だ でも 同時にかるたは 10枚の「取ったーーー!!」と 15枚の「拾ったーーー!!」だ

息を呑むような展開になって来た。

大差はもういい 1枚差でいい 1枚差でいいから いつか千早に勝ちたい

「ちはやぶる」の札を払い、太一が9枚差で勝利。桜沢先生も感服。

瑞沢の部長は見事ね 鍛えてある ”才能”と戦う覚悟がある――

太一は急に立ち上がり、千早の腕を掴んで引き摺るようにして廊下に連れ出す。

「ボヤっとしてんなよ 行くぞ2階 A級の決勝まだやってるから クイーンと新の試合だろ み……」

千早は床から立ち上がれず、ボロボロ泣いている。

「う う ううう~~~~ ううう ぇ A級だよう 太一ぃ―― う う う う~~~ おめでとう~~~」

A級昇級を泣いて喜んでくれているのであった。太一も嬉しそうに笑い、滲んだ涙を拭った。

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全国大会個人戦、太一が挑むB級決勝戦。登場した札は「しらつゆに」「こいすちょう」「うらみわび」「よもすがら」「なにわえの」「かささぎの」「ふくからに」「ももしきや」「ひともをし」「いまこんと」「すみのえの」「あいみての」「あきのたの」、決着は「ちはやぶる」。最後の太一の表情が良い。