chiha memo

漫画「ちはやふる」の伏線や感想などの超個人的備忘録

第139首 なんでもいい学びなさい

千早の頭の中では、太一の言葉の断片がぐるぐる回り続けている。

”好きなんだ” ”お前はおれが 石でできてるとでも思ってんのか”

進路相談中も上の空。高校教員を目指すのが部活動顧問になりたいからという安易な動機に、担任が指導。


真島家に実力テストの成績表が郵送された。太一が帰宅するなり、たるんでいると母が説教。

「まえから言ってるでしょ あなたはいろいろためこむタイプなんだから 常に息を吐く! 吐き切ることに集中して――…」

太一は母に背中を向け、かるた部を辞めたと報告。意外そうに「え」と驚く太一母。


部長で大黒柱の太一が退部したことを受けて、宮内先生も残された部員の対応をどうすべきか頭を悩ませている。しかし部室を覗いてみれば、入部希望の一年生に花野が頼もしい姿を見せている。駒野と西田は、太一に「かるた部を頼む」と言われていたが、出る幕がない。

入部希望者四人のうちの一人は、千早が新春大会で戦った田丸の妹、田丸翠。花野が一年生を別室で指導しようとするが、田丸はA級なのでルールなどもう知っているし、千早と試合したいと言い出す。他一年生から不協和音が聞こえ、花野も頭が痛い。

どうまとめんの これ 先輩…… 真島先輩 先輩がいなくなったのが 『好きな人に好きって言ってください』 あの結果なら 私が逃げるわけにいかない

千早と田丸の対戦が始まった。一枚目は田丸が取る。A級の一年生は貴重だが、三年生としては侮られても困るので千早にきれいに勝って貰いたい。千早連取。大江も安堵。

だれもなにも聞けないけど 部長が辞めて千早ちゃんがなにも言わないなんて 千早ちゃんともなにかあったとしか思えないの 背骨をなくしてどう立てるかわからないけど 千早ちゃんのかるたが鋭いままなら かるた部を前に押せる

しかし、千早は札を押さえた自分の手を見て、太一の告白を思い出してしまう。

千早 の 伸ばしたことのない爪が 好きだ 好きだ 好きだ 好きだ

記憶の中のキラキラと輝く太一が、暗く沈む。

やれねーよ かるた 百枚全部 真っ黒に

千早は目の前のかるたが真っ黒に見えて、「かぜをいたみ」の札に全く反応出来ない。田丸があっさり押さえ、不思議そうに千早を見る。千早は結局、16枚もの大差で負けてしまう。

廊下に出て泣き始める千早。深作先生が通り掛かる。

「深作せ… 先生~ 先生 か 『かぜをいたみ』の歌…… この歌…… わ 私 私が… 岩だったんです 岩で 粉々に砕いてたんです 太一の気持ちを ずっと 太一をずっと ずっと~~~」

千早は泣きながら訴える。

かぜをいたみ いはうつなみの おのれのみ くだけてものを おもふころかな

風が激しくて岩に打ち当たる波が自分だけ砕け散るように、私だけが心も砕けんばかりに、あなたを思い悩んでいる――という意味だ。

かるたが怖くて取れないと泣く千早に、深作先生は現代文・古典の問題演習を渡す。

「学びなさい なんでもいい 学びなさい」

部活帰りの一年生。田丸はウザさ全開で、千早に勝った自慢話。エース乗っ取り作戦を企てることを宣言する。

太一は塾の医学部進学コースに通い始めた。誰も部活やかるたの話などしない空間。しかし、何とそこには、先生として勤める周防がいた。

「あれ 君は A級の人?」

27.jpg

memo

先生の進路指導というか愚痴には、千早も思い当たるところがあるだろう。しかし、千早の独白が全く無いので、何を考えているのか分からない。この話での鍵「かぜをいたみ」の他で読まれたのは、申し出をかわす「はるのよの」と、心変わりしてませんよの「ひとはいさ」。それらの対象と意味をどう読み取るべきか。

千早が試合中に回想する告白場面の太一が、キラキラでにこやか。千早の記憶が改竄されている模様。この作品において回想場面の多くは絵の使い回しだが、全く新しい太一が描かれている。新に告白されてキラキラしていたのと同様に、実は太一の告白が嬉しかったということだろうか。

かるたを絡めて告白した新に対し、外見のことを多く連ねた太一の分が悪いように思えるが、千早は今回のように、自分の手や鏡を見る度に太一の告白を思い出してしまうという効果がある。成程上手いな、と思ってしまった。

塾の外観と周防が「先生」であることは、第23巻第120首にて描かれている。