chiha memo

漫画「ちはやふる」の伏線や感想などの超個人的備忘録

第92首 私は一生かるたが好きで

騒然とする観衆。

すごい男子が出てきた 子供のころから合わせると若宮クイーンに4戦負けなし 綿谷始永世名人の孫 ダークホースでもなんでもない本物のサラブレッドだ

一方、青ざめる新の両親。東京へ行かせる費用は、学資保険があっても心配ではあるが……

「だって…… だれが止められるんし…… 好きなことで 自力であんなん輝いてる子を」

太一は新を見詰める。

すごい すごい 『高校選手権優勝して 東京に行く』 クイーン破ってまで 本当に――

新が手を上げながら太一のところに来るが、太一は反応出来ない。

「あれ こういうときはハイタッチやないんか? おまえも優勝したんやろう 太一 おめでとう!」

千早が新の服を引っ張り、新が転ぶ。

「どうして…… どうして笑えるの? どうして落ち着いてかるた取れるの? 詩暢ちゃんみたいな強い人相手に」

千早の頭には渦巻いていた。

どうして どうして 私はあんな顔してしか取れなかったのに 「千速振る」 あの言葉みたいなかるたが どうして――

すぐ表彰式があるため新が移動し、千早は答えを聞けずじまい。

がんばってる がんばってきた だけど ちがうんじゃないの? なにが? どこが? わかんないけど ちがう――…

表彰式。A級優勝、綿谷新。B級優勝、真島太一。C級優勝、駒野勉、他一名。D級優勝、筑波秋博、他三名。千早の各階級優勝という無茶ぶりも、瑞沢は団体優勝校らしくBCD級制覇。

帰り際、千早は桜沢先生に声を掛けられ、A級決勝戦の録画を後で貰う約束をする。瑞沢メンバーを見送る桜沢。

気づいているかしら 今回の高校選手権で ただの一度も負けなかったのは 福井の綿谷新と 瑞沢の真島太一のみ

病院を回りに回って分かったことに、千早の指は良性の内軟骨腫。全身麻酔の手術で、一週間入院することになった。入院中、桜沢に貰った録画を見る千早。そして、新に電話してみる。


太一は大江を誘い、千早の見舞いに向かう途中、花屋で品定め。

「…… 元気になりそうな色の花を…… たぶん落ち込んでるから……」

千早は電話で新に訴えるように言う。

「わかりやすく言うと かるた強くなりたいんだけど そればっかり考えてるんだけど ずっとがんばってるんだけど ずっと……」

電話の向こうから、蝉の声が聞こえる。電波は届いても、違う世界にいるようだ。

「おれな 公式戦でも練習でも 試合するときはいつもあの部屋に戻るんや だれが来てもなんにも怖くない うれしくて楽しくて終わってほしくない 千早とかるたしたあのボロいアパートの部屋」

千早は衝撃を受ける。

あの部屋 あの時間が 新を強くしてるの?

太一が到着し、電話中の千早の表情を見て、顔色を失くす。千早は新と話し続けている。

よくわかんない よくわかんない気持ち でも 私は一生 かるたが好きで 新が好きなんだ

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全国大会表彰式を経て、帰京後に病院を回りに回って、指一本でまさかの入院手術となってしまった千早。そして、千早のために選んだ花も、太一ェ……

新は千早の怪我について「その後どうなった?」くらいは訊いてもいいのに、忘れているのか深刻に捉えていないのか、会話に登場しない。そもそも、試合を観られてバレたのであり、当初は後ろ手に組んで隠していたくらいだから、千早は自分が今病院にいることも話していなさそうだ。新は千早の現状を知らず、千早は新との物理的距離を感じ、接点にずれがある。

「新が好きなんだ」と来たが、そりゃそうでしょう。だって、お友達同士だもん。嫌いなわけがない。最後のコマに描かれた「ちは」札も、かるた愛と恋心を取り違えている現れではないかと、疑り深い私はそう思ってしまう。