chiha memo

漫画「ちはやふる」の伏線や感想などの超個人的備忘録

第168首 今度こそ約束や

藤岡東の管野先生は、新が個人戦に出ないと何故言ったのかを考えていた。

おれが思うよりずっと 昨日の負けがこたえてたんかな…… あの美人に負けたことが悔しいのか チームが負けたことが悔しいのか しかしなんで 綿谷は 藤岡東にかるた部を作ったんやろうか

西田から見て、若宮が正面を睨み付けている。千早が善戦している。そして、千早の宣言を思い浮かべる。

太一はいつか戻ってくる それまでに 私はクイーンになる そして瑞沢を北央学園みたいな強豪校にする

千早は「クイーンになる」を先に言った。「強豪校」の方が難しい、ということか。

おれも 「強豪瑞沢」がいつか叶うなら おれもその一番下の土台の一人だ

西田が「よし! 取ったぞ一枚」と声を上げる。千早はその声を背中で聞き、勇気付けられる。理音も触発されて「富士崎ファイッ」と声を出し、新と対戦している日向ははっとさせられる。仲間同志の連携に、少し驚いて理音に目をやる新と、苛立ちを募らせる若宮。但し、個人戦での声掛けはマナー違反なので、運営委員の村尾が注意を入れる。桜沢先生は皆の様子を観察。

部活でかるたを選ぶような子たちは たいてい自分を天才とは思っていない 自分には足りないところがあると 本能的に感じてる だから エンジンを外側にも置く 自分じゃないけと自分のような 大好きな人たちに持っていてもらう

若宮は着物の袖が気になり、襷を取り出す。それは、以前のクイーン戦の時、千早がダディベアハンカチを破って仕立てた即席の不格好な襷だった。襷を締めるのに手間取っている若宮を、千早が介助。

「え し 詩暢ちゃん 好きだから」

若宮が大山札で自陣を守りつつ、千早の囲い手を破って千早の陣から綺麗に払う。千早は愕然と若宮を見やる。

ずっと練習してきたのに 全然ちがう ちがう 持ってる一秒の長さがちがう 女王 2年まえから私の 絶望と憧れ 届きたい 届きたい

千早は健闘したが、若宮に7枚差で敗戦。挨拶して伏せたままの千早に、若宮はいつものいけず。

「強かったあ 高校選手権ももう終わりやなあ 次がまたありましたら お手やわらかになあ」

千早は顔を上げ、涙を浮かべながらも力強く若宮に返す。

「…… つ 次は クイーン戦で」

その言葉に若宮も笑みを引っ込めて、厳しい表情で応じた。

「今度こそ 約束や」

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前回の流れから期待を抱かせつつ、千早敗戦。第1巻冒頭にある通り、二人はクイーン戦で戦うから、今回はこれで展開を留めておくのが丁度良いのだろう。読まれたのは「ふくからに」「わたのはら・や」、高二での対戦時は上手く取れたのにリベンジされた「きみがため・お」。

現時点での二人の差を考えてみる。詩暢はいつも札に描かれた姫達の会話を読み取っているようだが、千早が札からそこまで何かを強く見い出している描写はない。何となくの色や風景が浮かんでいた程度か。恐らく札と仲良くなり切れていない。そもそも、第9巻第52首で菫も「百人一首なんて恋愛の歌ばっかり」と言っているのに、肝心の千早はまだまだあんぽんたん。だから、深く理解出来ていない。この点は詩暢も同類っぽいものの、札との親密度が千早より詩暢が上だから勝てるというわけだ。

ただ、春以降は千早の気持ちが札で暗示されていることが多く、印象的なのが「こいすちょう」。第20巻第108首にて天徳内裏歌合で「しのぶれど」が「こいすちょう」に勝った話が出て来るが、「こいすちょう」を思い浮かべてばかりならそりゃ、「しのぶ」さんには負けるわな。というわけで、恋の始まりを詠う「こいすちょう」状態の千早がそこから脱して、クイーン戦までに恋を学んで理解度が深まれば、詩暢に勝てるんじゃないかな。真っ赤な恋の歌とされる「ちはやぶる」の札が千早の試合で並ばない理由もそこにありそう。

第32巻終了。鈴蘭の花言葉は「再び幸せが訪れる」。「おおえやま」は、この巻では登場しないが前巻の最後、千早が新との戦いで勝利を決めた札。巻末四コマ漫画は、瑞沢一年生部員のライン。