chiha memo

漫画「ちはやふる」の伏線や感想などの超個人的備忘録

第164首 違う始まりの瞬間

全国大会団体戦三位決定戦。瑞沢と藤岡東の戦いは、五勝ゼロ敗で瑞沢が勝利。挨拶後、千早は即寝。

一方、決勝戦は二勝二敗のタイで、北央ヒョロと富士崎日向の運命戦という展開。ヒョロの消耗が特に激しい。札が読まれても反応出来ていないが空札が続いたのが幸いし、ふと顔を上げた時にやっと太一の存在に気付く。

真島 おせーよ! さんざんメールしたのになにやってんだよ おせーよバカ …… 遅くはないか よかった ここまで粘ってて 見てろよ 真島 見てろよ

皆が固唾を呑んで見守る中、読まれたのはヒョロ側の札。テーピングだらけの手でそれを押さえ、三対二で北央学園の団体優勝が決まった。千早もちょうど覚醒。歓喜に沸く北央。

二年連続で準優勝という結果に終わった富士崎。桜沢先生は泣き出した理音に喝を入れるが、理音は懸命にやって来たものの三年間ずっとではなかったことを後悔して涙が止まらない。その様子に桜沢も言葉を失くす。

瑞沢チームを労う宮内先生。そして、部員達は一斉に、壁際で観戦していた太一を見る。その前を遮るように伸びる右手が、太一の胸倉を掴んで壁に押し付けた。新である。

「なにしてるんや 太一 なにしてるんや なんてえんようなってるんや せっかくの全国大会で 千早が主将としか取れてなかったのは おまえがえんかったせいやろ」

太一は目を見開く。周囲は傍観しているだけ。

「……いや ごめん 負けといて言うことでない 瑞沢強かった 完敗や」

新は冷静になって謝り、自チームの元に戻って行った。入れ替わって、太一のところに千早が来た。手には「たいち」と刺繍された鉢巻。千早は鉢巻を太一の首に掛け、その両端を握り締めたまま太一の胸元で泣き出した。

「遅いよ… 遅いよ太一 遅いよ 終わっちゃったよ 終わっちゃったよおーーーー」

号泣する千早に、目を潤ませる太一。

「ご… ごめん… 千早」

後方で涙を滲ませ居並ぶ部員達にも、太一は謝罪。

「ごめん…… みんな…」

皆も太一に抱きついて来た。

全部もう遅い みんなで戦う夏は これで終わり だけど 終わりの瞬間に 違う始まりの瞬間に 太一がいる

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新の目の前にいたのは、新が知っている千早ではなかった。新が知っている千早の傍には常に太一がいた――ということに気付いた新、そして気付かされた太一。前回、千早が試合中に太一を発見し、回想して気付いたことでもあるね。新、太一、千早はしりとり形式で「あらたいちはや」と名前が繋がっている通り、新と千早の組み合わせは太一が介在しないと成立しないってことか。そもそも「新が知っている千早」は、小学生版千早のままである模様。

第28巻第148首で太一がかるたに戻って来る時期について「何年後か何十年後か」と千早が話したのは強がりで、太一当人に言った「遅いよ」が本音か。千早と太一の距離感や手の位置は、表現が難しい。ところで、新は太一の存在にいつ気付いたのだろう。

その新の視線の先が、所々分かり難い。試合中に鉢巻の文字にも気付いてしまったのか、瑞沢部員達が抱き合っている場面もじっと見ていたのか。また、その鉢巻だが、抱擁場面の途中から見当たらない。わざとさりげなく消しておいて、後に有用なアイテムとして使われるのかと想像していたが、単純に作画ミスか。

最後の独白は、千早が新に告白された後の第23巻第120首の「昔の自分じゃなくなったって 新しいことが始まったって」を受けての「終わりの瞬間」で、「違う始まり」で太一に仕切り直し?

まだ続いている決勝戦で読まれた札は「たかさごの」「こぬひとを」「きみがため・は」。